2018年4月23日 更新

2018 国際医用画像総合展(ITEM)報告レポート③  〜キヤノンメディカルのAI開発〜

4/13~4/15にパシフィコ横浜で開かれたITEMに行ってきました。画像診断支援AI技術開発の各企業の動向についてレポートします。今回は、キヤノンメディカルです。

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パシフィコ横浜で開かれたITEM2018(4/13~4/15)に行ってきました。
今回の学会テーマは、「夢のような創造科学と人にやさしい放射線医学」。大企業を中心に多くの企業で、画像診断支援AI関連の展示・プレゼンに力が入っていました。機器展示会場だけでなく、ランチョンセミナーにおいても、各企業が画像診断支援AIの現状と方向性をプレゼンし、どこも超満員の大盛況となっていました。
今回は、前回の日立製作所に引き続き、キヤノンメディカルのAI開発の動向についてレポートします。

キヤノンメディカルの医療用AI開発

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 今年の1月に、東芝メディカルからキヤノンメディカルに社名変更され、今回がキヤノンメディカルとして初めての展示になります。今年4月11日にNVIDIAとの提携を発表し、医療研究機関向けのディープラーニング研究インフラの開発に取り組むことを発表しました。ディープラーニングの研究を行いたいが、何から手をつけたらいいのか分からない、という医療研究機関でも、気軽にAI開発にチャレンジできるようになることは、日本全体の医療用AI開発の活性化に繋がりますね。
https://r.nikkei.com/article/DGXLRSP476953_R10C18A4000000

Deep Learningを用いた画質改善

また、キヤノンメディカルは、ディープラーニングを用いた画像再構成(Deep Learning Reconstruction:DLR)に公言して取り組んでいる国内で唯一の企業ではないか、と思います。DLRとは、ノイズの多い画像とノイズの少ない画像(教師画像)のペアを学習データとして、その画質変換をディープラーニングで学習させることにより、新たに得られた画像のノイズを除去し、高画質な画像を得ることを可能にする技術です(図1)。
(図1)Deep Learningを用いた画質改善

(図1)Deep Learningを用いた画質改善

ノイズの多い画像からノイズの少ない画像への変換をディープラーニングで学習させることにより、新たに得られた画像のノイズを除去し、高画質な画像を得ることが可能となる。
via Innervision, 32(7), 31-34, 2017.
 ディープラーニングは、臓器のセグメンテーション(領域抽出)、病変の抽出、腫瘍の分類などに用いられることはよく知られていますが、DLRのように画質改善に用いることもできます。キヤノンメディカルは、CTのDLRは広島大学と、MRIのDLRは熊本大学やボルドー大学と共同研究を行っており、今後、ますます低線量で高画質の画像を短時間で取得する事が可能になっていくでしょう。
http://www.e-radfan.com/product/64877/

 キヤノンメディカルが今年の4月に発表した、DLRを用いたCTでは、学習データ画像ペアの低画質の画像として、低線量で撮影したCT画像を、高画質の教師画像として、自社開発の逐次近似再構成法(FIRST:Forward projected model-based Iterative Reconstruction Solution)による画像を用いており、この手法による再構成時間は3分程度だということです。Deep learningを用いている割には再構成に時間がかかっている印象がありますが、前処理・後処理で何らかの追加処理がなされているのかもしれません。

Deep Learningを用いた画像変換(MRI→CT)

 また、このDeep Learningの手法はモダリティーを超えた画像変換に応用でき、例えば最近では放射線治療の分野で、MRIからCTへの変換に応用されています(図2)。放射線治療では、近年MRI-linacと呼ばれる、治療のためのX線を患者さんに照射中にMRIを同時撮影する技術が開発されており、被ばくなしで照射中の解剖学的構造をリアルタイムに取得できるようになってきました。一方、現在、線量計算シミュレーションはCT上でのみ可能なので、MRIをCTに変換して線量計算を行うことにより、毎回の治療における解剖学的変化を反映した線量計算が被ばくなしで可能になる、ということになります。現在、このMRIからCTへの画像変換技術の研究開発が進められており、今後の精度向上が期待されます。
(図2)Deep Learningを用いた画像変換

(図2)Deep Learningを用いた画像変換

放射線治療の領域で、MRIをCTに画像変換して線量計算を行う技術の開発が進められている。(今回のキヤノンメディカルの展示とは関係ありません)
via Han X. MR-based synthetic CT generation using a deep convolutional neural network method. Med Phys. 2017;44:1408-1419

肺結節の画像診断支援

 肺結節の画像診断支援に特化したシステムの開発を京都大学と共同で行っています。学習データとしては、京都大学病院で構築された1000例を超える肺結節症例データベースを活用しているとの事で、多種多様な結節と、それに対応した確定診断名、放射線科専門医が記載した画像所見、既往歴や喫煙歴、血液検査、癌マーカーなどの臨床情報も付与されているようです。

 画像データベースには、良性結節、原発性肺がん、転移性肺腫瘍の3種類のラベルづけがなされており、この3つの項目に関する推論確率を定量的に提示してくれます。この技術はディープラーニングではなく既存の機械学習の手法ですが、医師の知見に基づいた特徴量(30項目以上)も取り込んで学習させており、推論結果に対する根拠も合わせて提示してくれるため、診断医の疑問解消に貢献しているようです。

 また、対象画像の過去の類似症例も検索して表示し、それに紐づいた読影レポートや臨床情報も閲覧できるため、読影レポートの作成においても診断医の負担軽減に一役買っているようです。


以上、今週は、
富士フィルム、日立製作所、キヤノンメディカルの3社の医療用AI技術開発の動向についてレポートしました!各社とも持ち味を生かしながら、AI開発を急速に進めていることがよくわかりました。
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