2016年9月29日 更新

医用画像位置合わせの基礎③ 〜MRI画像を使った相互情報量の計算〜

今回は、前回紹介した相互情報量の概念を画像に応用し、実際のMRI画像を用いて相互情報量を計算することにより、画像の類似度を評価することをご紹介します。

15,157 view お気に入り 1
今回は、前回紹介した相互情報量の概念を画像に応用し、実際のMRI画像を用いて相互情報量を計算することにより、画像の類似度を評価してみようと思います。

③ 2つの画像の相互情報量を求める

2つの画像A, Bにおける相互情報量とは、前回述べた相互情報量の考え方により、

「画像Aの画素値を知ることによって得られる画像Bの画素値についての情報量」ということになります。これはまさに、相互情報量が画像の類似度を表していることを示しています。例えば、2つの画像が全く同じならば、相互情報量は最大になり、2つの画像が全く無関係ならば、相互情報量はゼロになりますね。

簡単のため、2つの画像A, Bの画素値をいずれも 256階調(8bit)に変換しておきます。そして、全ての画素を網羅して、画素値の組み合わせ(a_i,b_j)の頻度を数え、それらをマッピングした2次元ヒストグラム h(a_i,b_j) を作ります。(ここでは、左上をヒストグラムの原点とし、横軸は画像Aの階調 a_i (i=1〜256)、縦軸は画像Bの階調 b_j (j=1〜256)とする。)

では、下のような脳MRI画像*(181×217 pixels)において、画像を回転させることによって2次元ヒストグラムや相互情報量がどのように変化するかを見てみましょう(計算プログラムは下に記載)。
 (1604)

図1. 元画像Aとそれを回転させた画像B(回転角度 = 0, 1, 2度)における2次元ヒストグラムと相互情報量
回転角度が0度の場合(つまり同じ画像同士)の2次元ヒストグラムは、図1右上に示すように傾きが-45°の直線になります。これは、どの画素においても、 a_i = b_jが成り立つことから理解できます。

回転角度を1度、2度と増やしていくと、直線から外れる点の数が増えてきているのがわかります。



では、画素値(a_i,b_j)の組み合わせが出現する確率 p(a_i,b_j) は、どのように表されるでしょうか?
 (1607)

上式のように、「ある画素値の組み合わせの頻度 / 全頻度」として、 h(a_i,b_j) を用いて表されます。

また、画素 a_i が出現する確率 p(a_i) , 画素 b_j が出現する確率 p(b_j)は、p(a_i,b_j) をそれぞれ縦方向、横方向に積分することによって、
 (1609)

と表されます。

上の3つの確率を、前述の相互情報量 MI(A, B) の式
 (1611)

に代入することにより、相互情報量の値を求めることができます。(つまり、2次元ヒストグラムさえ得られれば、確率はそれを用いて全て求められ、相互情報量も求められます。)

結果は、図1や図2に示すように、回転角度の絶対値が増すにつれて、相互情報量の値が減少するのが分かります。
 (1613)

図2. 用いた脳MRI画像における回転角度(-20度~20度)と相互情報量との関係
相互情報量を求めるにあたり、pythonでプログラミングしましたので、参考にしてみてください。
17 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

LP-tech2周年記念#人気記事のまとめ#第15位〜第11位

LP-tech2周年記念#人気記事のまとめ#第15位〜第11位

LP-techが始まってから2周年を迎えました。ここまでLP-techを続けることができたのも読者の皆様のおかげだと思っています。そこで、LP-techの感謝祭ということで、人気の記事を第20位から第1位までをご紹介します。今回は第15位〜第11位までです。
医用画像位置合わせの基礎⑥ 〜アフィン変換とは?〜

医用画像位置合わせの基礎⑥ 〜アフィン変換とは?〜

今回は、画像位置合わせに用いられるアフィン変換をご紹介します。
木田智士 | 18,341 view
医用画像位置合わせの基礎⑤~Fiji pluginを用いた画像位置合わせ~

医用画像位置合わせの基礎⑤~Fiji pluginを用いた画像位置合わせ~

前回紹介した、LPixel社のImageJ registration pluginに引き続き、今回は、FijiというImageJの拡張版ソフトを使った画像位置合わせをご紹介します。
木田智士 | 21,308 view
医用画像位置合わせの基礎① 〜画像の類似度とは?〜

医用画像位置合わせの基礎① 〜画像の類似度とは?〜

近年、放射線診断や放射線治療において、医用画像位置合わせは重要な技術になってきています。ここでは、医用画像解析に興味のある学生や研究者のために、医用画像位置合わせに必要な基礎知識についてまとめました。
木田智士 | 49,718 view
LP-tech2周年記念#人気記事のまとめ#第5位〜第1位

LP-tech2周年記念#人気記事のまとめ#第5位〜第1位

LP-techが始まってから2周年を迎えました。ここまでLP-techを続けることができたのも読者の皆様のおかげだと思っています。そこで、LP-techの感謝祭ということで、人気の記事を第20位から第1位までをご紹介します。今回は第5位〜第1位までです。

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

木田智士 木田智士