測定対象となったピクセルを表示します。そのままだとほぼ真っ黒で、表示されたピクセルがみえないので、[LUT > Glasbey inverted ]としてLUTを変更してください。個々のビーズが異なる色で表示され、視認できるようになります。GlasbeyというLUTは、階調全体に渡ってなるべくランダムに色が配分されるように考慮されたLUTで、このようなラベリングを目的とする画像(Categorical image:名義画像といいます)に対して用いることを目的として設計されています 。このLUTは白を背景とする画像になりますが、生物画像用には黒の背景を用いることが多いので、Fijiには組み込まれているGlasbey Invertedという背景が黒の独自のLUTを使いました(Cf. #1)。ビーズに添えられた数字はビーズそれぞれのID番号で、Resultsの表に表示される行番号の数値結果に対応します。ビーズのそれぞれのピクセル値を確認すると、これらのID番号が対応していることがわかるかと思います。これらは全て、二値化の閾値とサイズフィルタにひっかかったピクセルになります。
surface_mapは計測対象の表面を示したものです。先ほどとおなじようにLUTを変更してみてください。中抜きの円を見ることができるはずです。複雑な形状の測定対象の場合、このような表示も理解の一助になると思います。
これらの画像と同時に表も出現し、実際に測定された数値が得られます。 表中、一番左端の数字は上記に示した測定対象のラベルを示しますが、その横に今回の解析目的である体積の測定値が表示されています。 今回はほぼ同じ大きさの蛍光ビーズだったのでほぼ同じ値が得られています。
正確な体積測定のために
さて、基本的には2,3のクリックだけでスタックデータに含まれる3次元中の多数の計測対象について、体積が測定できました。大事なポイントをおさらい、考察します。
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フィルタ: 面積測定と同じように体積測定の肝はセグメンテーション、つまり測定対象を正しく分けることができるかどうかです。大抵の顕微鏡画像と同じように今回もノイズを含んだデータであったので、メディアンフィルタをかけることでセグメンテーションの改善を図りました。観察者の意図に合った測定となるように適切な画像処理を行うことが体積測定成功の鍵です。
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閾値: 閾値によってセグメンテーションされる領域が変化するので、当然この値によって計測結果が変わります。今回は蛍光ビーズという比較的境界がはっきりした対象だったので適当に決めましたが、生体内の組織や細胞を対象とする場合、この閾値を客観的に決定するために画像処理が必要だったり、一意に決めることが難しい場合もあります。深さによって閾値が変わることもしばしばあるので、上述の画像処理を使うか、データを複数に分けるなどの工夫が必要なときもあります。
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使いどころ: 同一データに多数の測定対象が存在したり、測定対象の形状が複雑である場合、セグメンテーションが上手くできれば今回のような解析方法は強力なツールになります。100個の測定対象が100スライスに点在するデータなどの場合、手作業で同様の測定をすると気が狂いそうになるかもしれませんが、3D Objects counterなら数クリックで完了します。ただし、上述のように別データの場合はそれぞれのデータにおける閾値が同じである保証が必要であるため、リファレンスとなる対象、つまりそれぞれのデータに含まれる同じぐらいの体積のものを見つけることが鍵となります。そのようなリファレンスがない場合、単にデータごとの閾値の違いを見ている可能性もあるので注意しましょう。
また今回は便利なのでプラグインを使いましたが、もちろんマクロやスクリプトを作成することで面積測定から体積を算出することも可能です。
測定値の検証と3次元計測の勘所
さて、今回計測したビーズは半径4マイクロメートルの規格のものを使いました。ビーズは球形をしているはずですが、[Image -> Stacks -> Orthogonal Views]を使ってデータを見るとz方向に伸びて見えます。計測値と実際の値の差を考える上で、3次元データもしくは共焦点画像データ特有の問題について次回触れたいと思います。お楽しみに。
- Ref. 1 "Colour displays for categorical images" Chris Glasbey, Gerie van der Heijden, Vivian F. K. Toh, Alision Gray 2007 DOI: 10.1002/col.20327