2016年11月18日 更新

Deep learningで画像認識①〜Deep Learningとは?〜

Deep learningとは、人間の脳の神経細胞のネットワーク(ニューラルネットワーク)を模倣した情報処理技術です。その活用方法についてご紹介します。

32,638 view お気に入り 6
最近、様々な分野でDeep learningと呼ばれる技術が用いられています。

Deep learningとは、人間の脳の神経細胞のネットワーク(ニューラルネットワーク)を模倣した情報処理技術です。Deep learningでは、層が深い(ディープな)ニューラルネットワーク(多層ネットワーク)を組むことによって、画像や音声などに含まれる特徴量をコンピューター自身が発見し、分類のルールを構築することが可能になりました。

従来は、人間がまず特徴量を設定し、その後、その特徴量を基に分類アルゴリズムにかけて分類するという手法でしたが、Deep learningにより、人間による特徴量の設定の必要なくデータ分類が可能になったことは、機械学習技術における根本的な変化です(図1)。
図1. 画像データ分類における従来手法とDeep le...

図1. 画像データ分類における従来手法とDeep learningの比較

Deep learningを用いた画像認識では、この多層ネットワークの「層」に対応して画像の特徴が学習されます。例えば、数字の手書き文字「3」を画像データとして入力したとしましょう。浅い層(左側)では、「3」の小さい特徴が認識され、層が深くなるにつれて、小さい特徴が組み合わされ、「3」の大きな特徴が認識されます(図2)。

このようにして、大量の様々な手書きの「3」の画像を入力し、それが数字の「3」というものであることを教えて学習させていくと、どのような手書きの「3」にも共通して反応するユニットが生成されてきます(特に右側に近い層において)。こうして、どのような手書きの「3」にも共通する特徴が学習されていき、今まで入力されたことのない手書きの「3」が入力されたとしても、数字の「3」だと認識し、分類が可能となります。
図2. Deep learningにおける層ごとの特徴...

図2. Deep learningにおける層ごとの特徴量抽出領域の変化

また、You tube上にある大量の画像データをDeep learningの多層ネットワークに入力し学習させることによって、ヒトやネコの顔などの特定の物体だけに選択的に反応するユニットが自然に生成されることがスタンフォード大学とGoogleの研究チームにより示されました(2014年)[1](図3)。これも、上の手書き文字の例と同様、層の浅いところでは、線分などの小さい特徴が認識され、層が深くなるにつれて、より広範囲の特徴が認識されるようになるためです。

ちなみに、この研究で用いられたDeep learningのネットワークの層数は22層になります。層を多く積み重ねることにどういう意味があるのか、またこれらのネットワークは入力画像の何を「見ている」のか等の根本的な疑問には、まだ明確な答えはありません。

しかし、Deep learningを用いた画像認識はまさに、私たちが文字やヒトやネコを認識する時に用いている視覚的な「概念」(同類の物のそれぞれの表象から共通部分をぬき出して得た表象)をコンピューターが学習により得ている、ということは確かです。
図3. Deep learningを用いた画像認識の例...

図3. Deep learningを用いた画像認識の例(ヒトやネコの顔に反応するユニットが出現する)

このDeep learningの技術を用いて、医療で用いられる画像データ(医用画像)から病気を判定することも可能になってきています。医用画像にはレントゲン写真、MRI、CTスキャン、顕微鏡写真などがあります。解析を行う前に、大量の医用画像データをDeep learningのネットワークに入力し学習させ、診断したい患者の画像データの「特徴を抽出し分類する」ことによって、画像中に悪性腫瘍などが存在する確率を高速に推定することが可能になります(図4)。LP-techでも過去の記事で紹介しています。
図4. Deep learningを用いた医用画像の自動診断

図4. Deep learningを用いた医用画像の自動診断

放射線科医や病理医1人あたりに診断しなければならない検査画像は、年々増加しています。また、診断の難しい疾患になればなるほど、読影のスキルも必要になるため、医師1人当たりの負担はより大きくなり、見落としや見間違いも増える可能性があります。今後、豊富な医用画像データ量を活かしたDeep learningによる画像診断により、医師の負担を減らし、より安全で高精度な画像診断が進んでいくことが大いに期待されます。

このように、Deep learningは画像認識の分野で大きな成功を収めています。画像認識で主に用いられるDeep learningの多層ネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)と呼ばれます。次回は、このCNNについて詳しく紹介します。
10 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

Deep learningで画像認識③〜ネオコグニトロンとは?〜

Deep learningで画像認識③〜ネオコグニトロンとは?〜

Deep learningは、画像認識において大きな成功を収めています。そこで用いられる多層ネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)と呼ばれており、画像認識に適した独特の構造を持っています。
木田智士 | 22,784 view
人工知能エンジニアMeetUp!#3〜医療ビッグデータの活用〜のまとめ

人工知能エンジニアMeetUp!#3〜医療ビッグデータの活用〜のまとめ

先日、「人工知能エンジニアMeetUp」と題して、医療ビッグデータの活用に関する講演がありましたのでその模様をご紹介します。
日本が進めるAI画像診断支援②

日本が進めるAI画像診断支援②

大量に集められた医用画像データベースを用いて、いかに効率的に解析可能な教師データを作成していくか、またAIをどのように臨床業務のワークフローに組み入れていくか、がAI画像診断支援の実装に向けた今後の大きな課題です。今回は、AI画像診断支援の実装に向けた具体的な取り組みについて紹介します。
木田智士 | 3,807 view
日本が進めるAI画像診断支援①

日本が進めるAI画像診断支援①

AIによる医用画像診断支援を進めていくためには、大量の医用画像データが必要です。現在、日本の学会や研究所が中心となって、大規模な医用画像データベースの構築が進んでいます。今回は、その大規模データベース構築の現状について紹介します。
木田智士 | 3,867 view
日本企業の画像診断支援AI開発 2018 ⑤ ~エルピクセル~

日本企業の画像診断支援AI開発 2018 ⑤ ~エルピクセル~

4/13~4/15にパシフィコ横浜で開かれたITEMに行ってきました。画像診断支援AI技術開発の各企業の動向についてレポートします。今回は、エルピクセルです。
木田智士 | 2,889 view

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

木田智士 木田智士