2016年9月28日 更新

病理画像解析システム「e-Pathologist」

病理画像解析システム「e-Pathologist」についてご紹介します。

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病理画像解析システム「e-Pathologist」

顕微鏡で細胞の病変を見て、病気を診断する「病理医」。
彼らが行う病理診断はがんかどうかを診断するだけではなく治療方針を決定する上で重要な行為である。
病理診断を行うことができる病理医は日本では 約2,000人しかおらず、この人数で、年間2,000万件の病理診断をしているのだ。(編集部注1)
これは1人あたりの負担があまりにも大きすぎる。この問題を改善するために「e-Pathologist」が開発された。

e-Pathologist

それでは「e-Pathologist」について紹介しよう。

仕組みはこうだ。
まずスライドガラスに載った病理組織をデジタルスキャンして、数百メガバイトから数ギガバイトの大きさの高精細な画像データにする。その後「e-Pathologist」は、この病理組織の画像データの細胞や構造の特徴を分析して数値化する。そしてこれを膨大な画像データを使って作った「がんらしさ」の抽出ルールと照らし合わせてあやしいか判断する。
日刊工業新聞

日刊工業新聞

NEC発見チャンネルMITATV

NEC発見チャンネルMITATV

これがそのサンプル画像である。
「e-Pathologist」は正常な細胞や構造とどのくらい離れているのかを色で示してくれるのだ。
青いほうが正常で赤くなるほど異常があるということだ。
(編集部注2)

これを見ればどこが悪いのか、まさに一目瞭然である。

社会への影響

今までは組織のすみずみまで検査しなくてはいけなかったのが、「e-Pathologist」が開発されたことで病理医は赤いところに注目して早く診断することができるようになった。これは病理医にとっての負担が減ると共に、診断のスピードが速くなったので同じ時間でも従来より多くの患者の病理診断を行えるようになった。
参考URL
http://jpn.nec.com/info-square/mitatv/discover/12/index.html
http://www.daiwa-grp.jp/dsh/results/38/pdf/23.pdf



※今回の記事は職場体験の来た中学生の調査レポートを専門家がレビューしたものです。

編集部注1:日本専門医制評価・認定機構によれば、日本病理学会の病理専門医の数はH25年度で2232人である。放射線科専門医の数も6334人と非常に少なく、画像診断の外部委託なども行われている。

http://www.japan-senmon-i.jp/hyouka-nintei/data/index.html

編集部注2:外部ストレスにより正常細胞が徐々に元の形から崩れていき(前癌病変)、腫瘍細胞に移行する。

腫瘍細胞は細胞増殖が抑制されず(接触阻止の無効化)、周囲の細胞を押しのけて大きくなる。その為、病理医は、細胞の形が他の部位と違っていたり、他の細胞の領域に割り込んでいることなどから、悪性度を調べる。

また、細胞の診断の為には、患者の身体を針で刺したり、尿や唾液、糞便中等から細胞をとって調べる。
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