多様体を理解するpart1〜座標系とは〜

多様体の工学的応用についてご紹介します。

目次

こんにちは!
以前、多様体の工学的応用について、このような記事を見かけました。

多様体学習とは、多次元のデータからそれよりも低次元のデータを抽出する方法です。これにより次元を削減し、計算量を落とすことができます。

一般に4次元以上になるとデータを可視化することができません。3次元未満であると空間にプロットすることでデータを可視化することができます。これを可能にするのが多様体です。

これを理解すべく、多様体についてまとめていこうと思います。

1. Euclid幾何学と非Euclid幾何学

多様体を議論する上でまず整理しておきたいのは、Euclid幾何学と非Euclid幾何学です。

Euclid幾何学

高校生までに習う幾何学。主に「図形」を扱い、Euclidの原論に基づく「定義」、「公準」、「公理」から形成される幾何学。

そこで問題になったEuclidの原論の第5公準、「平行線の公理」です。

平行線の公理とは、「平面上に直線 LとL上にない点pが与えられたとき、点pを通りLに平行な直線は与えられた平面にただ1本存在する。」

高校生までに習う幾何学で考えてみると当たり前のことが、非Euclidだと成り立たなくなります。

非Euclid幾何学

ユークリッド幾何学のような「まっすぐ」な平面ではなく、ある種の「まがった」曲面での幾何学を考える分野です。下の例をみてください。

ポアンカレ円盤内の直線

ポアンカレ円盤では、空間として、
\begin{align}
D^2 = \{(x,y) \in R^2 | x^2 + y^2 < 1 \}
\end{align}
を考え、円盤の境界では無限遠と考えます。そしてこの世界では

$D^2$の境界と直交する円弧または直線

が「直線」であると定めます。

この空間では上の図のようにある点pを通るような「平行線」は無数に存在します。

2. 「曲がった」空間での幾何学

曲がった空間での幾何学を具体的に考えてみるために、以下のような単位球面
\begin{align}
S^2 = \{ (x,y,z) \in R^3 | x^2 + y^2 + ^2 = 1\}
\end{align}
での幾何学を考えてみましょう。球面上の位置を特定するときには$(x,y,z)$の座標を指定するよりも”地図”(atlas)を使って場所を指定します。

場所を指定する方法として、「緯度、経度」がありますよね。これは、球面上の点を
\begin{align}
r = \{ R\cos\phi\sin\theta,R\sin\phi\sin\theta,R\cos\theta \}
\end{align}
と$(\theta, \phi)$でパラメタライズし、そのθ , πを指定することで、場所を決めているわけです。
次にこの球面上の3点を結んで、三角形を作ってみます。

球面上で作った三角形

この三角形、角度の和が180度にはなりません。球面三角形の内角の和は常に180度より大きいのです。平面の幾何学では成り立たないことが、曲がった幾何学を考えることで成り立つことがわかります。


今回はEuclid幾何学と非Euclid幾何学をみてきました。このような議論からどのように多様体に結びついていくのか、次の記事で説明していきたいと思います。

補足

多様体の勉強におすすめの本を紹介します。
数学が好きな方、おすすめです。
多様体と同じく、幾何学的な応用がある、トポロジーについておすすめの本も紹介します。
参考文献:平成27年度春季研究大会講演「曲がった空間の幾何学」