医療×人工知能の最前線を追え‼ 「人工知能エンジニアMeetUp!#4〜AI医療画像診断支援 & RSNA報告会〜 」のまとめ。Part 1

今回の記事は、12月22日に行われたLPixel主催MeetUpについてです! この記事はLPixelインターンの北村が担当しています。

目次

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「医療」×「人工知能」

 近年、X線・MRI・CTなどで撮影された医用画像の処理・解析技術は、放射線診断や治療などにおいて重要になってきています。こうした中、本イベントでは、医用画像を扱う研究者や医師、医用画像処理・画像解析に興味のある学生・社会人を対象に「医療」×「人工知能」をテーマとした講演会と交流会が実施されました。
*イベントを主催するエルピクセル株式会社は、ライフサイエンス(医療、農業、製薬)領域で撮影された画像の解析技術に強みを持つ東大発のベンチャー企業です。

日本の医療の現状とは

まずオープニングトークとして、LPixel代表取締役の島原さんがお話しされました。

島原 佑基

東京大学大学院修士(生命科学)。大学ではMITで行われる合成生物学の大会iGEMに出場(銅賞)。研究テーマは人工光合成、のちに細胞小器官の画像解析とシミュレーション。グリー(株)に入社し、事業戦略本部、のちに人事戦略部門に従事。KLab(株)では海外事業開発部にて米・アジア各社との業務提携契約を締結。2014年3月にエルピクセル(株)創業。「始動 Next Innovator 2015(経済産業省)」シリコンバレー派遣選抜メンバー。
テーマは、「日本の医療の現状とLPixelの取り組み」。
現在の日本の医療現場がおかれている状況と、LPixelの医療への取り組みについて紹介してくださいました。

ご存知の通り、日本では急激な勢いで少子高齢化が進んでいます。その勢いは凄まじく、超高齢化社会(65歳以上の高齢者人口が占める割合が21%以上)の割合を遥かに超え、言うなれば世界に先駆けて「超々」高齢化社会に突入する国となります。2015年における日本の人口にしめる65歳以上の割合は26%と、2位イタリアの22%を大きく離しています。

65歳以上が人口に占める割合。トップ5の国

そんな中、日本の医療現場には、大きく3つの見過ごすことのできない変化が起こっています。

1つ目は、画像データの膨大化。
日本は100万人あたりの医療画像検査台数が世界第1位で良質なCT画像や病理画像を集めやすい環境にあります。

人口100万人当たりのCT/MRI検査台数

2つ目は、読影医・病理医不足の深刻化。
質の良い画像が多くなった一方、読影医・病理医不足は深刻さを増しています。人口に対する病理医師の数がアメリカの1/5程、その医師の平均年齢は約50歳にもなります。また、一流の病理医となるまでに10年くらいの修業が必要な分野です。

圧倒的な読影医・病理医不足

3つ目は、2年前の薬事法改正。
この法改正によって、AI等の新たな技術を取り入れたソフトウェアが日本で使用可能になりました。

これらの状況を踏まえ、LPixelでは、画像解析と人工知能を組み合わせて多くの医療プロジェクトを進めています。
そのプロジェクトの1つが、「脳動脈瘤の検知」。
Deep learngingと画像解析によってCT画像を解析し、脳動脈瘤と疑われる個所を医者に提示してくれる診断支援ソフトウェアです。

脳内の血管3D。赤く示された部分が脳動脈瘤の疑いがあり

RSNA2016(国際放射線学会)におけるトレンドと最新技術

次のお話は、前回の「人工知能エンジニアMeetUp!#3〜医療ビッグデータの活用〜」にも登壇したLPixelエンジニア木田さん。

木田 智士

東京大学工学部物理工学科卒。東京大学医学部附属病院放射線科にて博士(医学)取得。 William Beaumont Hospital, University of California, Davisにて放射線治療分野におけるCT画像再構成・線量最適化の研究に従事。資格は、医学物理士、第1種放射線取扱主任者等。現在は、LPixelにてAIによる医用画像自動診断システムの開発に従事。
テーマは「RSNA2016(国際放射線学会)の報告」について。
RSNA(国際放射線学会)は毎年シカゴで11月末‐12月頭にかけて1週間開催される最も大きな放射線学会です。放射線科医、放射線技師、メーカーを中心に約5万人以上の参加者おり、多くの最先端の研究や技術を目にすることができます。

RSNA2016

RSNAでは2015-2016年にかけて、2つの大きなトレンドがありました。それは、AI用語の急増と医療画像の定量化&標準化。

1つ目のAI用語(Machine learning, Deep learning, CNN等)の急増の背景には、AIのテクノロジーを用いた診断支援システムが次々と発表されていることが挙げられます。
ここでは、木田さんの紹介して下さった事例の中でも、印象的なものをいくつか取り上げようと思います。

まずは、IBMのWatoson Health。
診療情報と画像情報を機械学習にかけ、可能性の高い病気の提示をしてくれます。2016年8月4日には、Watsonが60代の女性患者の正確な白血病の病名をわずか10分で見抜き、病名から割り出した適切な治療法によって患者の命を救ったと東京大学医科学研究所が発表し、世界中で話題となりました。

Watoson Health

次は、Encliticの最先端のDeep learngingを用いた画像診断支援。
2015年には、肺癌のスクリーニングソフトを発表。CT画像から93.7%で悪性と見分けられます。
こうした、ベンチャーがでてくる背景には、アメリカのオープンソースで多くの画像を手に入れることができ、政府が積極的に金銭面を支援もしているんだとか。日本もそのような環境が早く揃うといいですね。

Deep Learningを⽤いた肺癌の画像診断⽀援

日本からは、FUJIFILMのクラウドによる診療情報共有。
クリニック、中核病院、読影センターをつなぎ、綿密な連携、リモートでの診断をサポートしています。

クラウドによる診断情報共有

2つ目のトレンドは画像の定量化&標準化。キーワードはQI(Quantitative Imaging)、Radiomics、Radiogenomicsです。

QI(Quantiative Image)とは、日本語で画像定量化を指します。ここの定量化とは、遺伝子、画像、臨床情報の高精度化によって、物理学的、生物学的指標として画像を使用ことです。少し難しいですね。簡単に言うと、技術の進歩によって、より多くの情報を画像から抽出できるようになったということです。では、具体的に見ていきましょう。

HITACHは、磁化率を平面のピクセルではなく、立体のボクセルとして定量的に評価する技術を開発。
その結果、血液や組織の中の鉄分や酸素濃度の計測が新たに可能になりました。

QSM(Quantitative Susceptibility Mapping)

残り2つのキーワードはRadiomics & Radiogenomics。これはRdiology(放射線医学)、Genome(遺伝子)、Omics(多量の情報を系統的に扱う科学的手法)を組み合わせた新しい学問領域です。
なんのこっちゃってなる方も多いと思いますので、もう少し具体的にすると、CTなどの放射線画像、病理画像、診断情報を統合し定量的に扱い機械学習などで分析することです。
まだ複雑ですね。。。もう少し柔らかく言ってみると、複数の異なる情報まとめて定量的扱うことでMachine learningやDeep learningでの分析にかけることが可能になるということです。

例えば、CT画像と病理画像の関係を明らかにすることで、最終的にはCT画像のみで癌が悪性か、93%で見分けられるようになります。病気の早期発見や、患者さんにとっては、身体的、金銭的負担の軽減につながります。

複数の特徴量の組み合わせ+機械学習による前立腺癌の発見

今回は長くなったので、ここまで。
次回は、医師である龍 嘉治さんによる「機械学習×医用画像解析の最前線」と懇親会の様子をお伝えしようと思います。お楽しみに。