画像不正を疑われないための正しい画像処理方法

画像不正を疑われないための正しい画像処理方法をご紹介します。実験で取得した電気泳動画像や顕微鏡画像から客観的データを抽出するためには画像処理による定量的な解析が有効です。

本来であれば研究を発展させる上で重要な手段となり得る画像処理技術ですが、昨今の画像不正問題を受けて、不必要な疑惑を避けるために画像処理そのものを避けるといったことにつながりかねません。
このような画像処理技術に対する不信感を払拭するためには、画像不正を疑われないための正しい画像処理方法を知ることが重要です。 「ネイチャー」など30以上の学術雑誌を出版する Nature publishing group を始め、学術雑誌に関わる多くの出版社が以下のような投稿規定を定めています*1 (抜粋)。

1. 画像処理を施す以前の原画像を保持し、出版社 (および学術論文の読者) に求められた際には提示する

2. 撮像条件と施した全ての画像処理を記録し、主要な画像処理に関しては学術論文中に名言する

3. 学術論文に掲載する画像は原画像を正しく反映しており、各研究分野で受け入れられている画像処理方法であること

上記の規約1および2に関しては主に再現性を担保する目的で制定されています。興味深い取り組みとして、細胞生物学の学術雑誌 Journal of Cell Biology を出版するロックフェラー大学出版では、学術論文と併せて画像処理を施す以前の原画像をデータベースとして公開しており、読者は実際に自分の手で画像処理を施しながら学術論文を読み進めることができます*2。規約3は過剰に施した画像処理により実験データが隠されてしまうことを防いでおり、規約3を遵守するためには、研究分野の背景と併せて画像処理に対する理解も必要となります。悪意が無くとも、施した画像処理に対する知識不足からは誤った結論が導き出されることも事実です。

*1 http://www.nature.com/authors/policies/image.html

*2 http://jcb-dataviewer.rupress.org



▼上記の画像について

学術論文を出版する過程で、出版社に原画像の提出を求められる場合があります。また、出版社によっては原画像をweb上で公開する場合もあり、画像処理を施す以前の原画像は確実に保持する必要があります。加えて、撮像条件および施した画像処理の詳細な設定は実験ノートなどで全て記録し、実験を再現する上で主要な設定は論文中で明言する必要もあります。学術論文に掲載する画像は、主張したい目的に関して原画像を正しく反映している必要があり、正しい結論を導くためには画像処理に対する理解が重要となります。