2016年9月28日 更新

臓器の動態を3DモデリングしたUT-Heart

先日、サイエンスCGクリエイターの瀬尾拡史氏のインタビュー記事がBLOGOSで紹介された。瀬尾氏は、医学部に通いながら、専門学校でCG技術も修得し、医療とCGをつなぐ活動をされている。

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病院では、撮像されたCTやMRIのデータを専用のモニタで確認することで、診断が行われたり今後の治療計画が検討される。特に外科手術では、治療手技のシミュレーションの為にワークステーション上で再現した3D画像を活用するケースが増えている。
写真は、Image JのSampleのDICOM画像 ...

写真は、Image JのSampleのDICOM画像 CTで撮像したデータをもとに3D化している。

しかし、モニタ上で観察しても、実際の治療手技までシミュレーションすることは出来ず、手術とのギャップは残っている。

また、医療関係者以外では、身体の中でどのように臓器が働いているかイメージすることはなかなか難しい。そこで、3Dモデリングされた臓器の動画、仮想現実(VR:Virtual Reality)を用いれば、より自分の身体で何が起こっているかを身近に感じられるようになるだろう。

このUT-HeartはHPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」の課題3「予測医療」のプロジェクトの一環として開発されたものである。

分子レベルからの心臓シミュレーション

これまで別々に研究されてきた循環器系、筋・骨格系、脳・神経系のシミュレーションを統合し、心臓疾患や運動機能障害などの複雑な発症過程を解明し、最適な個別化医療を支援することが「予測医療」プロジェクトの目的である。

例えば、心筋細胞のレベルから心臓の機能をありのままに再現することで、ミクロレベルの異常と心臓の病気の関係を解明することが出来る。

今までも人の体を構成する脳・神経や筋肉・骨、心臓、血管といった個々の要素を、計算機を用いて研究する例はあったが、スーパーコンピュータ「京」によって、その演算処理がより高速になった。

医療情報に基づき個人の心臓をコンピュータ上に再現することで病気のメカニズムに遡った合理的な診断を行い、更にそれに仮想的な治療を施すことにより、最適な治療オプションを選択することが可能となると考えられる。治療法の詳細な検討や治療後の状態の正確な予測を行うことが出来ると期待されている。

マルチスケール・マルチフィジックス心臓シミュレータ UT-Heart

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こちらのUT-Heartという作品は、「世界最大かつ最高のCGの祭典」と名高いCG技術の国際学会であるSIGGRAPH2015でBEST VISUALIZATION OR SIMULATION賞を受賞した。

画像処理、画像解析はこれまで2Dが普通だったが、演算処理の高速化により昨今ではVirtual Reality(仮想現実)の分野も日進月歩している。画像処理・画像解析の結果を3Dで再現することも今後は増えていくだろう。
<参考URL>

株式会社サイアメント

新作公開! UT-Heart(-ズバッと!東大な日々。- の、その後の日々。)

予測医療に向けた階層統合シミュレーション―循環器系および筋骨格系・神経系の階層統合シミュレーション―(HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」| SCLS)
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山田涼太 | 9,719 view

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エルピクセル編集部 エルピクセル編集部